キスよりハグのほうが個人的には落ち着かない。
だってちゃんと意識、あるから。
「…嫌?」
「……いや、」
「気持ち悪い?」
「……いや、」
「…それは“嫌”じゃない“いや”、だよね」
嫌では、なかった。
なにしてんだとは思うけど、殺したいほど憎むかって言われたらそうでもない。
鼻をくすぐる和泉家のにおい。
真琴にしかないものだと思っていたけど、そっかこの香りはこの人も同じものを持ってるんだった。
「うわっ!つぶれるつぶれる…!おいコラっ!!」
「枠にうまく嵌めたいのさ俺だって」
「嵌まるどころかプレスされるっつーの…!!」
「だーってそれぐらいじゃないと俺たち、手にできんもん」
気づかされるように、対抗心は消えていく。
じゃああなたは無理やりにでも手にする方法を本当は選びたいってことか。
たとえ他の大切なものを壊してまでも。
「俺ズルいから……重ねられてもいーから、真琴に似てる俺を好きになればいいって思ってる」
似てないんだよ、ぜんぜん。



