学校イチ人気者なアイドルに恋する私。を、なぜかそのお兄さんが愛してくるんだが。





今に満足できない人間に、満足する未来などない───ソクラテスの言葉だったか。


どれだけ“なにもない今”という時間が幸せかはたぶん、失ってから気づくんだ。

私は失うことを誰よりも恐れているから、わりと今を大切にしているつもり。



「まあ経験者としてこれだけは言っとく。
……理解しようとしてくれる人間もいるんだよなこれが」



そう言われて真っ先に頭に浮かんだのは、真琴によく似た3年生の先輩。

1度だって貶さなかった。
軽蔑的な目でも見なかった。


そんな私を、好きだと言った。



「……うっちーがまさにそのタイプだったんだろーね」


「…なのかね?」



理解しようとしたから、まず付き合ってみた。

その後輩ちゃんが本気で好きになってくれたからこそ、自分も本気で向き合おうと思った。


結果がどうであれ、思い返して「良い思い出だ」と言えてる時点でそれは、相手にとっても同じ思い出になっているはずだ。