「それだって恋だったんだよなあ」
「……恋じゃ、ないだろそんなの。結局は男が好きってなってんだから」
「そーかい?向こうはすごいドキドキしてくれてたし、たかが手を繋いだだけで冗談抜きで心から“幸せだ”って顔してくれんのよ」
「…………」
「本気でこの子を傷つけたくないって思ったし、大切にしたいって思ってたけどな。当時のあたしは間違いなく」
異性が恋愛対象だったはずのあたしがだよ───?
こんなのもうハッキリ言われてるようなものだ。
「和泉妹に惚れてんだろ?」と。
そして私の気持ちを唯一理解してくれようとしている。
「…周りの目は、気になりませんでしたか」
「なったなった。デートとか行っても人がいるところでは手も繋げなかったもん」
「親にも言えない、誰にも言えないんですよ…、言ったら、ダメじゃん」
「けどなかには、言って世界が変わった人もいる」



