「…するよ。当たり前じゃん」
ここで「嫌だ」なんて言ったら、それこそぜんぶ壊れるの分かってるし。
選択肢なんか結局私はひとつしかないんだ。
「ほんと!?ありがとうりっちゃん…!!よかったあ…」
ぱあっと咲いた嬉しそうな顔は、どこまでも私を離してくれない。
のに、私に向けて欲しい目はいつまで経とうが向けてくれないんだ。
向けられることだって、ない。
どうしてその“男”に向ける目は、たかが“女”ってだけの私にはしてくれないんだよ。
不公平だ。
こんなの、不公平。
「ごめん。聞いちゃった」
お邪魔しました───と、玄関を出てそれはすぐ。
私を待ち伏せていたように声をかけてくる厄介な兄のほう。
知ってますよ。
さっきリビングのドアの前に立ってましたもんね。
なんで今日に限って真琴の部屋じゃなかったの、とか。
なんだっていーや、もう。



