どうして時間は止まってくれないんだろう。
当たり前すぎる当たり前な法則に、こんなにも反抗したくなる日がくるなんて。
「真琴、そっちじゃない」
「………わわっ!壁だったっ」
「…危ないから。ちゃんと歩けコラ」
「いっ、いえっさ隊長っ!」
単刀直入に言うと、数日前から真琴の様子がおかしい。
単純に変だ。
なにか良からぬものを口にしたかと本気で心配になるくらい、放っておけない。
道端に生えてるキノコとか、通りすがりの人間に貰った飲み物とか。
そーいうの口にしてないよね……?
「おい真琴っ、そっち男子トイレ!!」
「わひゃっ!?」
………なにその反応。
冗談でやってるふうには見えないし、あわあわ落ち着かないみたいだし。
さすがに歩かせることすら不安になってきて、そっと左手を取った。



