「ええ…、だって楽しい話すればりっちゃんの元気も出るかなって……思ったんだもん」
元気の出させ方が間違ってる、とは言わない。
ただそれは楽しい話ではない。
わりとシビアというか、グレーな話だ。
その区別も付かないような真琴はさ、そこらへんのカエルでも追いかけてればいい。
「…ふっ。ありがと」
でも、私のためにしてくれた。
私のことを思ってくれた。
伸ばしかけた手。
───は、視線を落とす真琴の髪に触れるより前に自分の意思でそっと下ろす。
「りっちゃん?」
「…行くよ」
「うんっ」
この関係を終わらす以上には、やっぱりなれない。
この気持ちを隠すことで守れるものがあるなら、それを壊す理由なんてものは無理やりにも消すことができる。
だって今までだってそうやってきたじゃないか。
「うわ…っ!ギャッ、いたっ!」
「っ!」
「あっぶな…、いまの車」
私が真琴の悲鳴を察知するよりも前に、なぜか私のうでが力強く引っぱられた。



