「せとー、授業終わったぞー」
いつの間にかキーンコーンカーンコーンと、終了を告げるチャイムが校舎には響き渡っていた。
あれからはずっとデスクで作業をしていたうっちーがクルリと、ようやく身体を向けてくる。
「ちょうど6現だったし、このまま着替えて帰るでいいんじゃないか?」
「……真琴が寝てしまったんで。もう少しいてもいいですか」
「いーけど、あたし職員室いくよ。大丈夫そ?」
「はい」
薬品のにおいが逆に落ち着くときがある。
保健室には生徒を安心させる何かがあって、ただそこに純粋なケガをした他の生徒が入ってきたら恐怖にも変わってしまう変な場所。
「…痛かったね、真琴」
うっちーがいなくなってから、やっと彼女のあたまを撫でてカーテンを閉めることができた。
穏やかに寝息を立てる真琴は赤ちゃんのような純粋さと、どこかで壊れてしまうんじゃないかという脆さを兼ね合わせている。
それが、とても────
「………かわいい…」



