「りっちゃん、りっちゃん」
「ん?」
「りっちゃんの名前、いいなあ」
「…なまえ?」
唐突にものを言ってくる子。
私は彼女のそんなところも好きだった。
もし無人島に遭難したとしてもこの子が隣にいれば退屈しないんだろうなって本気で思うくらい。
つーか無人島に1コだけ持ってくならって聞かれたら、私は問答無用でこいつを連れていく。
「りつって、かわいーもん…」
「…真琴もいい名前だよ」
「ううん。わたし、お兄ちゃんと逆が良かった」
これはたしか、出会ったばかりの頃も本人から聞いていた。
「ちょっとイメージと違うよね」なんて噂している女子たちの声もたまに耳にしたりして。
そのたびに私は心のなかでこう返すのだ。
クソかわいいだろーがこのやろう、と。
真琴は真琴だ。
真琴という名前が揃って、私の好きなきみが完成されるんだ。



