『りつー、ちょっと降りてきなさーーい』
『なーにーー』
『お隣さんに引っ越してきた和泉さんよ、ほら挨拶!』
それは、中学2年に上がる前の春休みのことだった。
私の前に彼女─真琴─が現れたのは。
『はじめまして律ちゃん。この子は真琴、律ちゃんと同い歳で今年中学2年生になるの』
『…はじめまして』
『ごめんなさいねえ。家では明るい子なんだけれどね。ほら真琴、隠れてないで』
母親の腕にしがみつくように背中に隠れるその子は、自分よりもずっとずっと幼く見えた。
私も人見知りするほうだけど、さすがにここまではならない。
私が目を合わせようとすると逸らしてくるくせ、こっちが逸らすとビビりながら逆に合わせてこようとする。
それが初めて顔を合わせた当時の真琴だった。



