「抱っこしてい?」
「………やだ」
「土だし、せっかくの甚平が汚れちゃうよ」
「…ってのは建前で?」
「きみに触りたいが本音です」
もうじゅーぶん触ってんだろ。
バランスは取れている。
ボケとツッコミ、大体決まってきた。
このひとの兄貴レベルは頂点。
ひょいっと抱き上げられて、せめて地面が芝生になっている場所に移動。
「ちなみに本当の妹なんかにはこんなことしないから。…好きな子だからするんだよ?」
チュッと、軽く跳ねてすぐ離れた。
もうこれ以上はしない、の合図っぽい。
「無事に嫌われました」
「…………」
「無事に引いてました。完全に」
「…………」
「いかにも敵を見る目で───」
「それ以上言ったら首の動脈切るよ」
「…こわ」
脅しにしては意味不明すぎる。
本当にやってしまって泣いてたらいよいよサイコパス認定だ。
「…律はなにもされてないよね?……よかった」
よくない。
なんにも、いっこも、良いことなんかないよ。



