学校イチ人気者なアイドルに恋する私。を、なぜかそのお兄さんが愛してくるんだが。





「殴っていーから」


「っ…!やめ…っ」


「やめない」



殴りたくないんだよ。

今の私はもう、あなたを殴りたくない。



「……ごめん、足りないかも」


「や…、っ!」



慰めるつもりならやめろ。

そう言ったなら、「俺がしたいだけ」とか何とか言ってきそうだ。


涙だらけの2回目は、また忘れられそうもない最低最悪なタイミングで最悪な出来事のあと。



「…っ、もっ、なげーよバカ…っ!」


「…だってもうたまんないから」


「ころす気か…っ」


「じゃあ…唇以外にする」



する、じゃねーんだよ。
だからなんで主導権いつも握ってんの?

最下層大魔界的な立ち位置から、なんで私の上に立てると思ってんだよ。



「本当は今日だって一緒に行きたかった。俺ずっと待ってたよ。…だから今年は家にいたんだ」


「……さそおうと、した」


「誘ってよ。…あんなヤツ選んで泣かされて、ばかだろ律ちゃん」



涙が落ちつづける頬を、すくってくる。

その涙くらいはちょうだいと、そう言ってくるみたいに唇が拾ってくれる。