「あそこにしまっちゃったみたいなの。あんなの出そうと思う?あ~さわりたくもない」
「年1しか使わないからって、自分で去年そこにしまってたじゃん」
「今年のお母さんは無理ね~」
こんな親子コントしてる場合じゃないんだってば。
一緒に浴衣を着ていこうって約束してたし、そろそろ着替えて準備しないと待ち合わせ時間に間に合わない。
「甚平って中学生かよ……」
「そう?あんたくらいの歳で着てる子をさっきも見たわよ?」
押し入れの奥の奥。
魔物が住んでいるんじゃないかと思うほど積み上げられた段ボールのひとつに浴衣は入っているようなのだけど。
お母さんは思い出した瞬間リタイア。
「来年は新しいのまた買ってあげるから!ね、おねがいよ律。今年は甚平で我慢して」
「……はあ」
仕方ないか。
和服には違いないし、なにかあったとき走れると思えば。
肌色素材に水色の花火が彩られた落ち着いた模様は嫌いじゃない。
軽々と袖を通して、短い髪にはおまけ程度に和柄のピンを留めた。



