「そーいやまだ挨拶もできてなかったじゃん。私ここで待ってるから」
「め、迷惑じゃないかなあ…?」
「なんでよ。試合に誘ってきたのは向こうなわけだし。それで迷惑とか言われたら、私そいつ蹴り飛ばすわ」
「えっ!?そんなのダメだよりっちゃん…!!先輩だしっ、仲良くしなくちゃ!」
「…いーから行ってきなって」
バッグを両手に抱えて、照れ笑いを浮かべながら小走りに向かっていった真琴。
せっかく良い席が取れたからできるだけここを動きたくない。
私のお昼はもういいかと、あまりいろいろ考えないようにしながら待機していた。
「ねえキミ、どこの高校?良かったらオレたちと一緒に見ない?」
「すっげえカワイイ友達も連れてたよね!あの子アイドルとかやってたりする?」
中学の頃から慣れっこだった私は、スルースキルだけは完璧。
音楽を聴いているフリをするだとか、寝てるフリをするだとか。
とにかく相手にしないことに限るわけだが、こいつら隣に座ってきやがった……。



