千景様が鍵をかけたところで、私は恐る恐る声をかけることにした。


「あの、千景様……」


「俺と2人きりの時くらい様付けはやめてよ」


さっきとは違い、千景様の声に甘さがこもる。


途端に何だか恥ずかしくなって俯いた。


私と千景様は内緒で付き合っている。


このことは誰にも言ってはいけない。


「は、はい。千景さん」


「本当なら敬語もやめてほしいくらいだけどね。あと、俯くのもやめてほしいな。羽結ちゃんの可愛い顔が見れないから」


本当に甘さたっぷり……


千景さんに俯くのはやめてほしいと言われたから、何とか顔を上げた。


「け、敬語は外すことはできません。千景さんの方が年上ですし、私のご主人様であるわけですから。そ、それと、可愛くなんかないですよ」


「んー、まぁ敬語のことは譲歩することにするよ。でも、可愛くないって言うのは訂正してほしいな。羽結ちゃんは可愛いよ。可愛いからこそ、男が寄ってくるわけだし。ほんといい加減自覚してほしいよ。俺の心が休まらないから」