新そよ風に乗って ⑧ 〜慕情〜

何だか、 昔を知らないのは私だけみたいで、 少し寂しい気持ちと虚しさが胸の内を漂っている。
「こっちは、 智子。 俺達の大学時代の友達で、 オアフに住んでいるんだ」
仁さんがそう言って、 智子さんを紹介してくれた。
「初めまして。 矢島陽子です」
エッ……?
「ああ、 ヨロシクね~! 明良~ランチなにぃ?」
私がお辞儀をして、 頭を上げるか上げないかのうちに、 智子さんはヒラヒラと手を振りながらキッチンへと入っていってしまった。
拍子抜けしてかたまっていると、 傍にいた高橋さんと仁さんが、 同時に両手を肩の横まであげて、 同じお手上げ! のポーズを作って見せた。
「プッ……」
それを見て、 思わず吹き出してしまった。
「根は、 悪い奴じゃない。 ただ、 ちょっとパワフルなだけだ」
高橋さんが、 そう言って微笑んだ。
「陽子ちゃん。 気にしない方がいい。 何を言われても、 真に受けなくて良いから。 言った当人は、 一歩歩き出したらもう言ったことすら忘れてる事が多いから」
「そうなんですか……」
そ、 そんなにパワフルな人なんだ。 何だか、 どう接して良いのか……不安だな……。

ダイニングテーブルに、 綺麗に並べられたカトラリー。 明良さんが、 私を診てくれている間に、 きっと仁さんがセッティングしてくれたんだ。 そんな仁さんのさりげない配慮と優しさに、 心が和む。
「座ろう」
高橋さんが椅子を引いて、 背中を押してくれた。
「あ、 あの……でも、 お手伝いしないと」
智子さんも手伝っているし、 私だけ座っているなんて、 やっぱり同じ女性として申し訳ない。
「陽子ちゃ~ん! 座ってていいからねぇ」
キッチンから明良さんがひょっこり顔だけ出して、 フライ返しで私を指しながら言っている。
「でも……」
「これ、 医者の命令! 貴博。 見張っててぇ」
「ああ」