新そよ風に乗って ⑧ 〜慕情〜

えっ?
まだ、 何か……あるの?
「あの時、 俺はお前に別れを告げた」
うっ。
高橋さん……いきなり、 何を言い出すの?
今、 思い出しただけでも、 胸が苦しくなってしまう。 忘れたくても、 忘れられない高橋さんとミサさんとの過去……。
「でも、 お前は自分の身体があんなになるまで、 俺以上に苦しんでいた」
咄嗟に、 首を振った。
それは、 違う。 違うの、 高橋さん。 ただ、 私が自分の健康管理が出来ていなかっただけだから。 
「苦しんでいたのは、 俺だけじゃなかったんだよな。 お前は、 それ以上に苦しんで辛い思いをしていた。 それがわかった時、 お前が俺に生きる希望を与えてくれた」
違うの、 高橋さん。
ただ、 何も出来ずに勝手に体調を崩して、 入院して迷惑を掛けただけなのに……高橋さんの方が、 どれだけ傷ついて、 苦しんで、 辛かった事か。 それが、 手に取るようにわかるだけに、 もう声が出なくて喉の奥が苦しくて、 ただ否定の意味の首を振っていた。
「だからこそ!  お前のお陰でこの澄み切った青空と、 澄んだ海と同じようになれた俺の気持ちと共に。 この海の色を忘れないよう、 そして……この石と同じ心を持っているお前に。 これを、 渡したい」
私より、 もっとずっと計り知れないぐらい、 きっと高橋さんはもっともっと辛かったはずなのに。 それなのに……。
もう、 駄目。
「高橋……さん。 ヒクッ……ヒクッ……」