新そよ風に乗って ⑧ 〜慕情〜

あのニューヨークに本店がある、 有名なお店だ。
「その時、 この石がショーケースの中にあるのを見つけたんだ」
そうだったんだ……ん?
「でも……あの時買ったのは、 ストラップだけでしたよね? あと、 私がピアスは買いましたけど……」
私がピアスを買っている時も、 上手く英語が通じないと心配だから、 高橋さんに隣りに居てもらった。
「あの時は、 まだ買ってない」
そうなの?
「お前がレセプションの前にヘアサロンに行っている時、 時間があったから。 それで、 何となく気になっていた石だったし、 それでもう一度行ったんだ。 所謂、 石にひと目惚れ?」
ひと目惚れって……。
ニューヨークに滞在している時、 ヘアサロンに行っている間に……。 私の知らないところで、 そんな事をしていたんだ。 全く気づかなかった。 高橋さんは、 そんな素振りも見せなかったし……。
「それで、 店員さんに石の名前を聞いたら、 いろいろ教えてくれて。 名前や石の由来、 希少価値の高い鉱石で、 ごく最近発見されたって事も、 そこで知った」
「これって、 希少価値が高いんですか? だ、 だったら、 も、 もの凄く高いんですよね? そ、 それだったら私、 貰えないです」
「フッ……。 まあ、 最後まで聞け」
「あっ、 はい……」
高橋さんは、 微笑み私の頭を撫でながら髪をクシャクシャにした。
「ちょうどそのショーケースの中に入っていた石はみんなルースで、 ニューヨークの本店だけの展開らしく、 半貴石とか珍しい石ばかり展示してあったんだ。 その中にこの石もあって、 加工もしてくれるって事だったんだ」
「ルースって……」
高橋さんの言っている事が、 あまりにも壮大というか、 まるで異次元の世界の話のようで呆気に取られてしまっている。
「そ、 それって……凄くないですか?」
何だか、 恐れ多くなってきてしまっていた。
「でも、 もう滞在時間もなかったし、 まず10日やそこらじゃ出来上がらないって事だったから、 一旦は諦めようとも思ったんだが、 そこはワールド展開している店だけあって、 日本でも加工してくれるって教えてもらえたんだ」
ひぃ……。