新そよ風に乗って ⑧ 〜慕情〜

高橋さん……余計に涙腺が緩んじゃうから。
「時として、 人は争う事を起こす。 勿論、 それは起こしたくて起こしている訳でもないのさ」
その言葉にハッとさせられ、 高橋さんを見上げたが、 それを高橋さんが無理矢理自分の胸に私の顔を押し付けた。
「前にも言ったかもしれないが、 人間関係は自己犠牲の基に成り立っている。 己を出せば、 諍いが起きる。 我を通せば、 争いが起きる。 身を引けば、 静寂を保てる。 全て、 旧漢字を含め、 争うという字が当てはまる。 人は、 交わればぶつかることもある。 争いを避けるには、 どちらかが身を引いている。 しかし、 それも引いた相手にとっては争い。 つまり、 自己犠牲の基に成り立っている。 但し、 相手に対して尊崇の念を持って常に接していれは、 そんな事は起こらない。 お前は、 それを見事にやって退けた。 簡単に出来る事じゃない。 俺に出来るかと言えば、 そうそう自信はない」
高橋さん……。
涙腺はとっくに崩壊していて、 高橋さんの腕の中で泣いていたが、 何か首にヒンヤリするものを感じて、 それが気になって少し力を緩めてくれていた高橋さんから離れて、 首の辺りを触った。
すると、 何かが右手に引っ掛かった。
そして、 それを辿っていくと……。
エッ……?
驚いて、 高橋さんの顔を見上げた。