案外その好機は簡単に訪れた。


高校の新学期が始まって1週間。


登校中にシロらしき女を見つけた。


「まさか同じ学校とはな」


リボンの色によると学年は1つ下。


1年ってことは、ついこの前まで中学生かよ。


中学生であの身体能力って、バケモノじゃねぇか。


「あ、地味子だ」

「よく学校来れるよね」

「恥ずかしくないのかな」


周りの女子からはそんな声が聞こえてきた。


シロらしき女は長い黒髪を前に垂らし、俯き加減に猫背で歩いている。


分厚い黒縁眼鏡をかけていて、前に話した時とは雰囲気がかなり違う。


だけど間違いない。


あれはシロだ。


でも、なんであんな地味な格好してんだ?


俺が桜台の生徒だって知ってるから変装して逃れようとしてんのか?


…甘い。


髪型を変えて眼鏡をかけただけじゃ俺の目は欺けない。