「仁から噂には聞いてたけど、すごい可愛い子じゃん」


え…仁…?


「仁のことは知ってるよね?」


小さく頷くと、彼は嬉しそうな笑みを浮かべた。


「よかったー。仁が唯ちゃんのことを気に入ったみたいでさ。どんな子なのかなーって気になってんだよね」


神月先輩が私を…?


やっぱり誰かと人違いしてるんじゃ…。


私は彼と接点なんてない。


今朝、たまたま間違えて話しかけられただけ。


あれだけの会話で私のことを気に入るはずがない。


「…学校、ツラくない?」


「へ…?」


「いや…。さっき、実は教室の様子見てたんだよね」


……あの惨めな姿、見られてたんだ。


カァッと顔に血が上る。


「仁なら、唯ちゃんの居場所になれるかも…なんちゃって」


「……この世に、私の居場所なんてないんです」


神月先輩と仲良くなってしまったら、それこそこの学校での居場所を失ってしまう。