傷痕に咲く 〜パティシエ総長と歪な少女〜



「なあ凛ちゃん、俺心配なんだよ。」

「何が?」

「ある時ふっと凛ちゃんが消えてしまいそうな気がするんだ。」


寂しそうな声で竜司くんが囁いた。


「俺が呪いをかけちゃったよね。」


抱きしめられているから、耳元で声がする。

低くて落ち着く綺麗な声。


「凛ちゃんは何も気にしなくていいんだよ。ただ、俺のそばに居てほしい。それだけでいいんだ。」


声に苦しそうな響きが混ざった。


「凛ちゃん、どうか消えないで。俺の言ったことは全て忘れていいから。ごめん。馬鹿でごめん。」


ぎゅうっと胸が苦しくなる。

泣きそうなのかと思ったが、涙は出なかった。

私は無言で竜司くんの背中に手を回した。

触れ合う面積が増える。

心臓がどくどくと早鐘を打った。

苦しくて苦しくてたまらない。

触れ合う部分が熱を持って胸がくすぐったい。


「竜司くん。」


気づいたかもしれない。

私の、ずっと目を逸らしていた感情に。


私は、彼が好きなのかもしれない。


恋。

この胸の高鳴りを俗な言葉に置き換えるなら、それは恋。

ただ、酷く胸が苦しい。酷く恐怖を感じる。

このまま壊れてしまいそうだ。

恋がこんなにも辛く苦しいものなら、私は恋に向いていない。


それでもこの感覚がどうしようもなく心地よくて、私たちは無言で抱き合い続けた。