傷痕に咲く 〜パティシエ総長と歪な少女〜


初めて彼を恐ろしいと思った。

双竜会の総長としての、冷酷で残酷な、感情のこもらない声。

間違いなく絶対に対峙したくない類の人間だ。


「だ…私たちは、ただ…」


すぅっと竜司くんの目が細められた。

ぶわっと冷や汗が吹き出した。

捕食者の目だ。

味方にいれば非常に心強いが、絶対に敵に回してはいけないと一瞬で解らされるほどに天性の強者の覇気をビリビリと感じる。


「朝宮、木崎、速水。覚えてるよ。」


朝宮と木崎はすでに逃げ腰だ。


「凛ちゃんからも君たちの名前が出たことがある。」


竜司くんが低く唸る。

その姿は、四神が一柱、白虎を彷彿とさせた。


「もう一度訊く。宮川凛に、何をした。」


へたっと速水が地べたに座り込んだ。

可哀想なくらい震えている。


「ごめんなさい…私、ただ…」


竜司くんは冷たく恐ろしい。

ただ、触れ合う箇所に感じる体温は、いつものように優しい温かさをしていた。


「凛ちゃんを追い詰めた一人か、あんたらも。」


三人は肯定はしなかった。しかし否定もしなかった。


「だって、だって、宮川が、不幸面するから…」


とうとう速水は泣き出してしまった。


「辛いのはお前だけじゃないのに、私は不幸ですって雰囲気垂れ流してて、ムカつくのよ!」


ズキズキと速水の言葉が胸を刺す。

言い返せない。

こいつらは殺したいくらいに大嫌いだけど、それと同じくらい自分も大嫌いだから。