傷痕に咲く 〜パティシエ総長と歪な少女〜



「変わってないのはお前もだよ。まだ辛気臭い不幸面してんのかよ。ムカつくんだよお前の態度。」


速水が吐き捨てるように言った。

通行人が足を止め始めた。

それすら気にならなかった。

拳を握りしめて、振り上げた。

こいつを殴ることに何の抵抗もなかった。

心のストッパーが壊れたみたいに、何も感じなかった。


「何してんの。」


直後、振り下ろす寸前の私の腕を強い力で掴まれた。

ふっと鼻をくすぐる慣れた香り。

私の腕を掴む大きな手は優しい手つきをしていたが、私が動くことを許さない強さがあった。


「凛ちゃん、落ち着こうか。」


抱き寄せられ、道の端に寄らされる。


「りゅ…じくん…」


全身の緊張が一気に解け、息を吐き出す。

知らぬ間に吸いすぎてしまって苦しかった呼吸が徐々に戻っていく。


「は…え…なん…で……」


少し落ち着いて、三人を見ると、状況が飲み込めないといった様子で目を見開いている。


「どう…して…宮川が…?」


速水の開き切った瞳孔が竜司くんを見つめた。


「あれ、君たちは例の三人だね。久しぶり。」


優しい声だ。

しかし、見上げてみると警戒心むき出しの鋭い視線が三人を捉えていた。

蛇に睨まれた蛙のように、三人は凍りついている。


「凛ちゃんに何をした、あんたら。」


今度は声の優しさも消え失せた。

守られているはずの私でさえ、ゾッとするような冷たく刺々しい声。