傷痕に咲く 〜パティシエ総長と歪な少女〜


悲しいような、くすぐったいような気持ちが心に流れ込んできた。

感情…感情か。

私の感情は一体どれなのだろう。

愛に欠乏した私たちは、どれを感情と呼べばいいのだろう。

名前のつかない気持ちを抱えて、苦しんで。

しかしそれを持ち続けたいと思えるほど幸せな感情。


「私には難しいや。」


そう言って微笑むと竜司くんはさらに優しく微笑んだ。

ドキッと心臓が跳ねる。

竜司くんの、たまに見せるその笑顔。

それを向けられると、どうにもむず痒くてたまらない。


「竜司くんは、誰かを愛したことはある?」


そう尋ねると、竜司くんは困ったように笑った。


「その話はまた今度な。」


唇に人差し指を当てて囁いた。

はぐらかされてしまったけど、それでもいいと思った。

こんな質問をしておいて、私に答えを聞く勇気はなかった。

それに、悲しいほどの彼の優しさに気づいてしまっていた。


本当は自覚している。

目を背けているけれど。

私たちの関係をおかしくしているのは、他でもない私だ。

それを気づかせまいとして、竜司くんが気を遣い、結局私たちはぎくしゃくする。


自己嫌悪に飲まれそうだった。