先程までいた鳩すら消えてしまった。
夕闇に包まれた静寂の公園で、私は何をしているのだろうか。
「よくも…」
突然すべてが馬鹿馬鹿しくなった。
母親も、私も、この世界も全て色褪せて見えた。
「よくもそんなことが言えるよね。」
振り向いて母親と目を合わせる。
母親が一瞬怯んだのが感じられた。
「少しは自分の責任も考えてみろ。自業自得だろうがよ。」
喋りだしたら止まらなかった。
いつの間にか私よりも背の低くなっている母の胸ぐらを掴んでまくし立てた。
「お前、返せよ。私から奪ったもの全部返せよ。」
「は?」
「私の心、私の体、私の人生、私の経験、全部返せよ!!!」
カッと目を見開いて母親の顔を凝視する。
目元とか、私に少し似ているだろうか。
記憶よりも老いた彼女に情は湧かない。何の感情も起こらない。
「お前らのせいで私はいつまで苦しめばいいんだよ!!!楽しいことも嬉しいことも全部全部返せ!!!どうして私が苦しいんだよ!!!分からないんだよ、感情が!!!お前らのせいだ!!!」
涙が溢れてくる。
しかし、これが何による涙なのかは分からない。
心はどこまでも空っぽで、ただ、絶望だけは生々しくこびりついていた。
「クソが……」
どうしようもない感情を、正体のわからない膨大な感情を、叫びだけで発散できるわけがない。
私は母親の胸元を掴んだまま泣きわめくしかなかった。
