傷痕に咲く 〜パティシエ総長と歪な少女〜



「あんた、よくも私のこと通報したな。」


母親に前髪を掴まれたまま揺すぶられる。

痛い。普通に痛いが、どうということはない。

私の心は未だ閉ざされたままだったようだ。


「通報してないよ…私は保護されて…」

「うっせーんだよ!」


パンと頬が鳴った。

平手打ちされて痛む左頬を庇うこともせず、私はぼんやりとしていた。


「てめえがヘマしたせいで目ぇつけられたじゃねえか!」


はあ?

意味がわからない。


「結局執行猶予は付いたけどよお、暮らしづらくってしゃあねえ。」


あ、執行猶予付いたんだ。

だから今この人は服役していないんだ。

あれだけ酷いことをしてきた親がのうのうと世間で生きている。

なるほど、嫌な事実だ。

しかし怒りは湧いてこなかった。

心の底からどうでもよかった。

こいつはもう他人だ。親権も無い。

私がこいつに心を痛める筋合いなどないのだ。

全てがどうでもいい。

過去の苦しんだ自分さえどうでもよかった。


「私、帰る。」


そう言って立ち上がる。

今度は体が動いた。


「おい待てよ。」


母親に背を向けたが、髪を掴まれて逃げられない。


「お前戻ってこいよ。」


再び体が硬直した。

この人は馬鹿なのだろうか。

どうして私がこの人のところに戻ると思っているのだろうか。


「てめぇ、恩を忘れるんじゃねえぞ。誰が育ててやったと思ってんだ。感謝くらいしろ。働けよゴミが。」