傷痕に咲く 〜パティシエ総長と歪な少女〜



『出ていけよ、このクソ餓鬼が!!きめぇんだよ死ねや!!』


その日は母の機嫌が悪かった。

朝から私は所持品を全て破壊され、拳の嵐に遭っていた。

とうとう母は包丁を持ち出した。

切っ先を私に向け、振りかぶる。

ひゅっと喉が鳴った。

それをなんとか避けると、恐怖で震える足を動かし、転がるように家を飛び出した。

近所の公園まで走り、ベンチに座り込んだ。

心の中で何かが限界に達したのを感じた。

全てが心の底からどうでもよくなった。

空っぽの心に唯一残った感情は、「死にたい」、ただそれだけだった。

苦しさを終わらせたい。

もう命なんてどうでもいい。

私はポケットをまさぐり、愛用のカッターを取り出した。

切れ味の悪くなった刃先を折り、新しい刃を露出させる。

袖をまくり上げて腕を見た。

汚く傷痕だらけの腕。

青く太い血管が見える。

知識もなく、この血管を切ったら失血死できるかと考えた。

躊躇いは無かった。

いつもより数倍力を込めて刃を当てた。

すっと刃先が皮膚にめり込んだ。

やったことのない深さだ。

これで死ねるだろうか。

息を吐いて、一気に刃を横に引いた。

見たことのない血飛沫が上がった。

一本じゃ足りない。

何回も何回も何回も刃を腕に突き立てた。

そのたびに流れ出る鮮血。

私はどんな表情だったのだろう。

苦しみから解放される喜びで笑っていたのだろうか。

痛みで顔をゆがめていたのだろうか。

それとも、何も感じない心のまま、無表情だったのだろうか。