傷痕に咲く 〜パティシエ総長と歪な少女〜


小学校に入って世界は変わった。

そして気がついた。

私の家は異常だ。

親への感謝の手紙を書く授業で筆を執れずに震えていた私の横で、同級生が拙い文字を書いていた。


新しい出会いもあった。

学年がひとつ上がる頃、ある女の子と関わり始めた。

身なりのみすぼらしい、見るからに「訳アリ」な女の子。

その子は親に構ってもらえなかったそうだ。

今ならそれがネグレクトだと分かる。

毎朝自分で結ってくる髪はみっともなくボサボサで、その髪を私が結い直すのが朝の習慣になった。

愛に欠乏している子は分かりやすい。

ベタベタと甘えてくるからだ。

私たちは共依存の関係となり、互いの心の穴を舐め合っていた。

日に日にアザが増えていく私と、日に日に痩せていく彼女。

傷の種類は違えど、ボロボロの者同士、助け合っていた。


ある日、 その子は「ホゴ」された。

最後に学校に来た日、彼女は泣きながら言っていた。

『辛い。もう無理。』

その時の彼女は誰がどう見ても限界だった。

私よりも状態が悪かった。

髪が抜け始めて、所々に小さな禿げができていた。

私は何も言えなかった。

辛いのはいつものことだったから。

その日の夜、彼女は交番に駆け込んだそうだ。


病院に運ばれ、治療を受け、「ホゴ」された。

学校の先生が教えてくれたのはそれだけだった。

彼女はもう二度と苦しまなくていい。先生はそう言っていた。