傷痕に咲く 〜パティシエ総長と歪な少女〜


__________________________

これは私が虐待で保護される前の話。

私は物心ついたときから親に愛された記憶がなかった。

幼少期の記憶は飛び飛びだ。

高いところから何度も落ちた気がするけど、それが何だったのかは分からない。

覚えているのは、痛み、苦しみ、悲しみ。

物静かな子だった。

泣けば殴られる、蹴られる。

いつも家の隅で震えていた。

ふたつの大きな影に怯えていた。父と母だ。

父と母は仲が悪いのに、私をいたぶる時はとても仲が良さそうだった。

幼心ながら気づいていた。父と母の絆はこの私であると。

しかしこの状況がどうすれば良くなるのか、はたまた悪くなるのかを考える能は無かった。

私は無力だった。

右も左も分からぬまま、軟禁状態の日々が続いた。

私がその期間に痛烈に脳裏に焼き付けられた記憶。

それは、母親の泣き叫ぶ声と、父親の怒鳴り声と、容赦なく飛んでくる拳と、窓から見える青空。

それが私の世界の全てだった。

テレビで言葉を覚えた。

お腹が空いたらゴミ箱を漁った。

ひたすら静かに、息を殺して、痛みを避けて、耐えて耐えて耐えて耐えて……

やがて6歳になり、春が来て、私は小学生となった。