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これは私が虐待で保護される前の話。
私は物心ついたときから親に愛された記憶がなかった。
幼少期の記憶は飛び飛びだ。
高いところから何度も落ちた気がするけど、それが何だったのかは分からない。
覚えているのは、痛み、苦しみ、悲しみ。
物静かな子だった。
泣けば殴られる、蹴られる。
いつも家の隅で震えていた。
ふたつの大きな影に怯えていた。父と母だ。
父と母は仲が悪いのに、私をいたぶる時はとても仲が良さそうだった。
幼心ながら気づいていた。父と母の絆はこの私であると。
しかしこの状況がどうすれば良くなるのか、はたまた悪くなるのかを考える能は無かった。
私は無力だった。
右も左も分からぬまま、軟禁状態の日々が続いた。
私がその期間に痛烈に脳裏に焼き付けられた記憶。
それは、母親の泣き叫ぶ声と、父親の怒鳴り声と、容赦なく飛んでくる拳と、窓から見える青空。
それが私の世界の全てだった。
テレビで言葉を覚えた。
お腹が空いたらゴミ箱を漁った。
ひたすら静かに、息を殺して、痛みを避けて、耐えて耐えて耐えて耐えて……
やがて6歳になり、春が来て、私は小学生となった。
