傷痕に咲く 〜パティシエ総長と歪な少女〜

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当てもなく近所をふらふらと歩き回る。

怒鳴り散らして号泣したらどうにも落ち着かなくなってしまい、部屋から出た。

久しぶりに顔を出した私に小太郎くんが駆け寄ってきたが、私に彼を構ってあげる余裕はなかった。

季節は11月になり、もうかなり肌寒い。

カーディガンの中でぶるりと身震いをした。

人気のない公園のベンチに座り込む。

足をブラブラさせながら雀や鳩をぼんやりと眺めた。

外気の冷たさに、頭が冷えていく。

慣れない大声を出したからだろうか、ひどい頭痛がした。


「凛…?」


唐突に頭の上から女の声が降ってきた。

びくんと身体が硬直した。


「あんた、凛でしょ」


顔を上げることができない。

女が来たからか、雀たちは鈍臭い鳩を置いて逃げてしまった。

鳩はまだ呑気に地面をついばんでいる。

私の背中に冷や汗が伝った。

呼吸が荒くなる。

もう人生で二度と聞かない声だと思っていた。

聞きたくもない。


「黙ってないで顔上げなさいよ。」


女が乱暴に私の髪を鷲掴みにする。

振り払わなきゃ、と思えば思うほど身体がだるくなって動かなかった。


「なんとか言いなさい!」 


そのままぐいっと顔を持ち上げられる。

見たくもない人と対面することになった。


「おかあ……さん…」


無表情の、恐ろしく冷たい顔の女を見る私の顔も恐ろしく無表情だったと思う。

互いに無表情の裏に巨大な感情を抱えて、爆発寸前だった。

やがて、母は少しだけ表情を緩めて鼻を鳴らした。


「こんなところに居たんだ。」

「お母さんこそ。」


無表情を貫くが、脳天から爪先まで恐怖に支配されていた。

この人は、私を壊した一人だ。

そしてこんな私を誕生させた張本人、全ての元凶と言っていい人だ。