傷痕に咲く 〜パティシエ総長と歪な少女〜



「ねえツナちゃん、どうしちゃったの。」


瑠衣の手首を掴んで肩から引き剥がす。


「しょうがないよ、瑠衣はせいぜい今年の四月からの付き合いだから。私のこと、知った気にならないでくれる?」


私にとってはこの数ヶ月の自分の方が異常だ。

こんなに明るく生きた数ヶ月は人生で初めてだった。

その期間しか知らない瑠衣が、なんで「ツナちゃん」の幻想を私に押し付けてくるのだ。


「……ごめん。」


瑠衣が心底傷ついたような顔をした。

その表情にハッとする。


「あ、私こそごめん。やっぱりちょっと調子が悪いや…」


瑠衣に喧嘩を売りかけたことにゾッとする。

頭を抱えてうずくまる。

瑠衣は表情が分かりやすい。女子みたいだ。

ちょっとだけ、蓮に似ている。

脳裏にポニーテールの少女の笑顔が浮かぶ。

あの子からは連絡が届いているのだろうか。スマホを見ていないから分からない。


「…なんか、日常の話でもする?」


瑠衣が気を使って話題を変えてくれた。


「そうだね。ここ一週間のみんなの話でも聞きたいな。」

「裕子と蓮の様子か、双竜会の動向か。」

「政治の話でもいいよ。」

「地球温暖化の話もするか?」

「増税の話もいいね。」

「本当に?体調悪いのに疲れないのか?」


ぽつりぽつりと会話が続く。