傷痕に咲く 〜パティシエ総長と歪な少女〜


鬱。

そんな言葉が頭によぎった。

鬱病は寛解状態だ。

そして私は今心に重い負担がかかるようなことなど無いはずだ。


「死にたくは…ない。まだ大丈夫。」


屋上に登って地面を見つめた日々を思い出す。

あの時は、空がとても魅力的に見えて、今すぐ飛んでしまいたいと思っていた。

そしてそれを止める人もいなかった。

今はどうだ。

竜司くん、蓮、瑠衣、ゆっこ、慎吾、双竜会のみんな、あさがお園のみんな。

大切な人が増えすぎてしまった。

彼らを置いて死ぬなど考えられない。

だのに何故、私は今こんなにも辛いのだろう。


「はぁ……」


もう一度ため息をつく。


「凛姉ちゃん」


扉の外から控えめに私を呼ぶ声が聞こえる。

小太郎くんだ。


「凛姉ちゃん、大丈夫?ご飯は食べないの?」


続いて、小さなノック音。


「ごめんね小太郎くん、私今体調が悪いの。」


私はかったるい声帯に力を入れてできるだけ明るい声を出した。


「小宮さんにも伝えといて。」


扉の外から躊躇う気配がした。


「でも、でも凛姉ちゃん、数日間何も食べてない。」


流石に数日間も部屋にこもってしまっては心配されてしまうか。

でも小宮さんにも園長の梶さんにも体調不良のことは伝えてある。

それに、昼にみんなが学校に行っている間、多少のものは食べている。


「ありがとう小太郎くん。私は大丈夫だから。」


扉の前の気配はしばらくして消えた。