傷痕に咲く 〜パティシエ総長と歪な少女〜



「いやー、竜司先輩」

「なんだ」

「どんまいです」

「ぶっ飛ばすぞ」


先程尾行していた道を竜司先輩の隣を歩きながら引き返す。


「竜司先輩、いつから僕が尾行していたことに気づいていたんですか?」


そう尋ねると、竜司先輩はすこしだけ眉をひそめた。


「知らん、ずっとなんか後ろで様子のおかしい奴がちょろちょろしてやがるなーとは思っていた。」

「さすが先輩ですね。」


沈黙。いたたまれない。

やっぱり尾行はマズかったですかねぇ…


「あの…竜司先輩、最近僕が会得した技術、見ますか?」

「はぁ?」

「まぁ一発ギャグだと思って聞いてくださいよ。」


竜司先輩は訝しげな表情をしたが、特に何も言わなかったのでOKだと解釈して僕は大きく息を吸った。


「それでは聞いてください。『サイレン』」

「は!?なんて言っ…」

「ふぁーーーーーーー」


虚を突かれた表情をした竜司先輩が僕を羽交い締めにしてくる。


「馬鹿野郎!近所迷惑だ!」

「ビブラートバージョンもあって…」

「やめろやめろやめろ、音痴なお前のサイレンビブラートバージョンなんて聞かなくても末路が想像できる!」

「じゃあスタッカートバージョン…」

「サイレンにスタッカートとかあんのかよ!?」

「音程は十二段階あるんですけど…」

「♯も含むんだな…」

「どの音がいいですか?」

「どれも嫌だわ」