傷痕に咲く 〜パティシエ総長と歪な少女〜



「大変だね、双竜会も。」


私も肩をすくめ返して竜司くんに答えた。


「まぁ、でも。」


竜司くんは頭の後ろで手を組んだ。


「とりあえずは凛ちゃんが無事で良かった。」


優しい笑みを向けられて、私はしどろもどろになり、頷くことしかできなかった。

あさがお園が見えてきた。

煌々と輝く灯りが私の家だ。

門の前で立ち止まる。


「送ってくれてありがとう。」


竜司くんが微笑んだ。


「ねえ、凛ちゃん。」

「何?」

「……ごめんね。」

「え?」

「俺と関わっていたばかりに、危険な目に合わせちゃったね。」


申し訳なさそうに目を伏せる竜司くんに慌ててしまう。


「え、大丈夫大丈夫!竜司くんが謝ることじゃないよ。」


好き好んで双竜会に関わっているのは私のほうだから。

竜司くんは少し寂しそうに笑った。


「凛ちゃん。」


そっと耳打ちされる。


「あのときは咄嗟にあんなこと言っちゃったけど、俺、本気で思っているんだ。」

「……え?」

「凛ちゃんが双竜会の姫だったらな。」


びゅう。

夜風が吹き抜けて私のスカートを揺らした。


「え…あ…私……」


竜司くんの顔は私の耳の近くにあるから、表情が見えない。

でも、次の言葉は私を動揺させるのに充分すぎた。




「守りたいんだ、好きだから。」




時が一瞬止まった。

心臓がぎゅっと縮んだ後、倍の速さで動き出した。

顔に一気に熱が集まった。

咄嗟に竜司くんを突き放し、手で顔を覆った。


「ごめん。」


私はひとことそう言い残して、駆け出した。

心がぐちゃぐちゃで、泣き出してしまいそうだった。

私は竜司くんの顔も見ずにあさがお園の中へ飛び込んだ。