傷痕に咲く 〜パティシエ総長と歪な少女〜



「ありがたい!抗争には至らなそうで安心したよ。」


「……ふん」


謝罪をしているのに余裕の笑みの神谷に対して、竜司くんは緊張の面持ちを崩していない。


「きっと双竜会も羅刹との抗争は望んでいない。そうだろう?」

「………」

「それは僕らも同じさ。無意味な戦いは避けるべきだ。」

「……ああ。」


いつの間にか慎吾と瑠衣が竜司くんの前に立ち、神谷を両側から牽制していた。


「神谷さん、そろそろ帰ってください。」

「うちの総長にあまりかかわらないでくれ。」


神谷は二人の威嚇をものともせず、少し肩をすくめた。


「良い番犬だね。じゃあ僕は帰るよ。ああ、そこに転がってる奴らは気にしなくていいよ。勝手に帰ってくるから。」


踵を返し、コツコツと小気味のいい靴音を立てて神谷が離れていく。


「じゃあね。」


ひらひらと手を振った神谷は、最後まで笑顔だった。