傷痕に咲く 〜パティシエ総長と歪な少女〜



「やっべぇな…」


隣で竜司くんがごくりと喉を鳴らした。

場が静かになり、神谷がくるりとこちらを振り返った。


「こめんねぇ、見苦しいとこ見せて。」


先程までの冷徹な表情は何処へ消えたのか、彼はとても優しい笑みを浮かべている。

それが今はむしろ恐ろしかった。


「凛ちゃんと、蓮ちゃんと、裕子ちゃん…だったっけ?怖い思いをさせたね。コイツらにはきちんと分からせておくから。」


神谷はそのまま私の前まで来て膝をつき、正座の体勢になった。

竜司くんが咄嗟に私の前に腕を出した。

しかし神谷は私に何かをするわけでもなく、そのまま頭を下げた。

床に額がこすれるほどに。


「この通りだ。この度は羅刹の馬鹿が迷惑をかけた。総長の僕から直々に謝罪させてくれ。悪かった。」


総長…!?

というか羅刹……って何だ?

頭の中はパニックだったが、この張り詰めた空気のなかでそんな呑気なことを訊く勇気はなく、私はただ頷くしかなかった。

神谷は立ち上がると、竜司くんたちに向けて口を開いた。


「本当に悪かった。必要があれば凛ちゃんたちの怪我の治療費などはこちらが持つ。そして今後は双竜会に手を出さないよう、しっかりと教育する。今回のことはそれで水に流してくれないか。」


「…ああ、構わない。」


竜司くんは真剣な顔で頷いた。