傷痕に咲く 〜パティシエ総長と歪な少女〜


その男は私が一番最初に殴り飛ばした男だ。

随分と殴ったり蹴ったりしてしまったけれど大丈夫だったのだろうか。



「そうです、石田さんに命令されました。」



木村はがくがくと頷いた。


「ふーん、石田、事実なの?」


ずっと首元を掴まれていたのだろうか、石田という男が苦しそうに答えた。


「そうです。あの女が双竜会に出入りしているって聞いて…双竜会を潰すなら人質を取るべきだと思って」


言い終わる前に石田が吹っ飛んだ。

倉庫の壁に激突する。

速すぎてなにがなんだか分からない。

かろうじて神谷が石田を蹴り飛ばしたのだけが分かった。

ビリビリと緊張感が漂った。


「誰が勝手に判断していいと言った。」


追撃に次ぐ追撃。

壁に寄りかかる石田を神谷が蹴飛ばし続けた。

壁に血が飛び散った。

白い物体が私の足元まで飛んだ。数秒経ってそれが石田の前歯だと分かった。


「石田、お前は常々馬鹿だと思っていたが、これほどまでに阿呆だとは。幻滅した。」


攻撃を止めた神谷が親指を立てて首元に当て、そのまま横に引いた。

顔から笑みが消えた。


「破門だ。二度と羅刹の敷居をまたぐな。」


そしてくるりと振り返って床に転がる男たちを睨みつけた。


「お前らは全員今日から豚だ。」


男たちの顔が引きつった。


「嫌なら出ていけ。」


そう、どすの利いた声で神谷が凄むと、全員目を伏せた。