傷痕に咲く 〜パティシエ総長と歪な少女〜

顔を手で拭ってみると、べっとりとおそらく鼻血であろう血液が付着した。

殴られた頬が熱い。唇も頬も腫れたり切れたりでボコボコとしている。

ああ、こりゃ酷い顔だわ、納得した。


「凛ちゃん、顔、冷やすよ。」


鉄パイプから手を離した竜司くんがそっと私の前に屈んだ。

用意していたのだろうか、濡れた布巾で私の顔を拭っていく。


「痛ぁ…」


我ながらアホみたいな声で呻きつつ痛みに耐える。

顔の骨が折れたりしなかったのは幸いだった。

それでも、私の顔を丁寧に拭く竜司くんの泣き出しそうなのを堪えているような顔が私の心を苦しめた。

彼は何故そんなに悲しそうな顔をしているのだろうか。

何故私をここまで気にかけ、ここまで大切に扱ってくれるのだろうか。

私には分からない。彼は私以上に私を大切に扱う。

ひどく胸が苦しかった。


一通り顔を拭き終わり、体の見えている部分の傷の応急処置をした後、竜司くんは保冷剤を渡してくれた。

顔に当てるとひんやりと気持ちが良く、腫れが引いていくような感覚がした。


「他に痛いところないか?」


ちょっと躊躇ったが、竜司くんの真剣な顔を見て私は素直に自分の脇腹を指さした。


「脇腹、殴られた。」


私は制服のブラウスを捲り上げ、腹を露出した。

自分でも初めて見たけれど、脇腹は痛み相応の見た目をしていた。