「おい、どうすんだよ」
「今から捨ててくるか?」
「ふざけんなよ既に追いかけてきていたらどうすんだよ」
「ボスに連絡は」
「それだけはやめとけ!」
部屋の中は騒然としていた。
私が竜司くんと繋がりがあることは私のスマホでいくらでも証明できた。
その意味を理解した瞬間、男たちは顔を青くして私たちをよそに相談を始めた。
「ゆっこ、大丈夫?」
椅子ごと這いながらゆっこの顔の見える位置まで近づく。
ゆっこはニコッと笑って答えた。
「痛くない?私の知らないところで何かされてない?」
「大丈夫、私そんなに抵抗してないから。」
いつもの優しい調子で答えるゆっこに一気に緊張の糸が緩んで涙が溢れてくる。
「蓮は?」
「蓮は、逃げたよ。凛が時間を作ってくれたから。きっと今頃竜司くんたちを呼んでくれている。」
ほっと息をついて安堵する。
蓮が逃げられたことだけでも十分な朗報だ。
「ゆっこ、ありがとう。私、頭が真っ白になって…」
「大丈夫、辛いことは思い出さなくていい。」
ああ、私はいつもゆっこの包容力に救われている。
私にもゆっこのような母がいたらな、とつい思ってしまう。
その笑顔を見ているとなぜか余計に胸が苦しくなった。
思い出したくもない記憶を呼び戻してしまったからだろうか。
今、どうしても自分自身を汚物のように感じてしまう。
私は彼女の側で笑っていて良いのだろうか。
分からなくなりそうだ。
