傷痕に咲く 〜パティシエ総長と歪な少女〜



「凛!!!」


左からの鋭い金切り声。ゆっこだ。涙を流している。


「お願い、もうやめて、凛をそれ以上傷つけないで。」


ゆっこが震え声で訴えている。


「ゆっこ、あなたこそやめて。私は大丈夫だよ。」


口に溜まった血と唾液を吐き出して私は声を振り絞って伝えた。


「あぁ?うっせえなデブがよ!」


一人がゆっこの体を蹴る。

ゆっこの椅子は派手に音を立てて倒れた。


「ゆっこ!」


頭を打ってない?どこを蹴られた?気持ち悪くない?

色々な言葉と感情が頭を駆け巡る。


「はぁ、ブタの乱入で萎えたわ。おい、女、お前、分かってるよな?」


胃の奥の方がサーッと冷えた。

ドクンドクンと心臓が嫌な音を立てる。

舌打ちをした男が私の脚を縛る縄を切った。


「よく見たら可愛い顔してんじゃねえかよ」


半笑いで喋る男がバケモノに見える。


『このことは誰にもいうなよ』


過去の記憶が呼び起こされる。

最悪の、記憶の奥底に封印していた真っ黒な過去が。

あの痛み、恐怖、絶望、無力感、嫌悪感が一気に鮮明な思い出となって蘇った。

目の前の男の手が私の太ももに伸びる。

叫ぶこともできなくて、吐くことを忘れた息をひたすら吸うしかなかった。


「や…いや…それだけは…」


恐怖でどうにもならない震えが全身を覆う。