傷痕に咲く 〜パティシエ総長と歪な少女〜


カザミは4匹の子犬たちをそれぞれ舐め、挨拶をした。

あまりにも穏やかすぎて拍子抜けしてしまった。

双竜会の人たちが通っては「犬が増えてる!」と驚いて子犬を撫で回していくから面白い。

竜司くんにパシられた壮助はエサや玩具を持って行ったり来たり。

元気に遊び回る犬を見て竜司くんは満足気に微笑んでいた。

その裏で犬アレルギーに苦しみくしゃみを連発する双竜会員がいたような気もするが竜司くんはまるでお構いなしという飄々とした態度をとっていた。

恐るべき総長…。


その後私はカザミたちと戯れつつ挨拶しに来てくれた人たちとしばらく談笑し、帰ることになった。

竜司くんは送ると言ってくれたが私は遠慮して一人で帰ることにした。

日が暮れるのが日に日に早くなっているとはいえ、4時の空はまだまだ明るい。

ここから家まで歩いたらめちゃくちゃ時間がかかることは目に見えているが、なぜかどうしても歩きたい気分だったのだ。

双竜会もこの後集会があるらしくメンバーも忙し気だった。

今日は休みでもないのに妙に会員が多いなと思ったらそういうことだったのかと腑に落ちた。それじゃあ尚更竜司くんを頼って送り届けてもらうこともできない。

1時間ほど馬鹿みたいに歩き続け、駅前に着くと退勤ラッシュの人の多さに驚く。

空はまだまだ明るいが駅前のネオンは煌々と光り輝いて夜の始まりを仄めかしていた。

疲れたように家路に着く人がひしめき合う道路を無心で進んでいると見知った背中を見つけた。