「隣に引越して参りました。これどうぞ」
感じのいいお隣さん。
わあ、シュークリーム!
ママ達が帰って来てすぐ報告した。
「丁寧な方ね」
「家もお礼しないとな」
「それより早く食べようよ!」
小さくて可愛いシュークリーム。
三人で各々口に含むと、サクッ!
そこまでは良かったんだけど……。
「何これ、クリームが入ってない……」
「他のも全部だ」
「お店が間違えたのかしら?」
そんなことある?
でも、そうでなければ何?
まさかわざとじゃあるまいし。
謎は謎のまま中身のないシューは冷蔵庫行き。
翌日、ママがお隣さんと顔を合わせた。
「昨日はご丁寧にシュークリーム……を頂きまして」
「恐れ入ります。今後ともよろしくお願いします」
あまりに感じのいい人だったので、ママもクリームが入ってなかった事をいえなかった。
その晩、中身のないシューをどうするか皆で話し合う。
「明日生クリームを買って来るわ」
「苺も買お!」
「いいわね」
「俺は黄色いクリームのがいいなぁ」
「じゃあパパ作ってよ」
「そりゃ無理だ」
「じゃあパパの意見は却下ですぅ」
翌日、皆で買物に行こうと外に出ると、丁度お隣さんが出て来た。
「あら、お出かけですか」
「はい、ちょっとそこまで」
その時パパが言った。
「そういえば、頂いたシュークリームにクリームが入ってなかったんですけど」
「えっ!?」
お隣さんも目がまん丸!
お店に検めると言って箱ごと引き取っていった。
その数日後。
中身の詰まったシュークリームを携えてお隣さんが来た。
「先日はご迷惑をおかけしました」
後ろには見知らぬ男性がいる。
「そちら旦那さん?」
「いえ……」
聞けば、この人こそがクリームの入っていないシューを作った張本人だという。
いつもお隣さんが気になっていたが、なかなか声をかけられず、話すきっかけが欲しくてクリームを入れずに渡したらしい。
お陰でこの度お付き合いすることになったそうだ。
謎が解けたらこんな甘い結末が待っていようとは……!
「パパ、ファインプレー!」
「本当ね。パパが言わなかったら、今日の二人はないわ」
「いい事した後はシュークリームがうまいな。
やっぱり黄色いクリームが一番だ」
「パパの意見に異議なぁし!」