「アサ、リク! 賽銭箱が荒らされてる!」
発見した同級生マナと、警官と管理担当の地区役員に来てもらい、現場を確認。
壊れかけた賽銭箱のお金は幸い盗られてなかったが、入っていたのは数千円分の小銭。
警官が担当のおじさんと話をしている。
「監視カメラなどは?」
「ここの予算じゃ無理だよ。
これじゃあ、賽銭箱を直す方が金がかかる。
いっそ、賽銭だけ盗んでくれた方が良かったくらいだ」
私達が張り込んで現行犯逮捕!
なんて出来たらいいけど、夜の外出は親がうるさい……。
ふと、マナが暗い顔をしていた。
「どうしたの、マナ?」
「ううん、何でもない」
調べてみると、町のあちこちで大きな事件に至らないまでも、何者かによる不法侵入が起こっているらしい。
そんな中、中学校にも警備業者が営業に来た。
「あ、お父さん……」
「え、あの人マナのお父さんなの?」
「うん……」
マナが俯いて去っていった。
「アサ、なんか変じゃない?」
「リクもそう思う? マナ、何か隠してるよね」
私達はもう一度賽銭泥棒や侵入事件の情報をさらった。
「この町以外では起こってないね」
「こんな侵入してるのに、犯人は全然上達してない」
「うん、盗難被害はない」
「盗む事が目的じゃないのかな……?」
さらに現場を回って聞き込み。
「盗られなくても、やっぱり不安に感じてる人が多かったね」
「マナのお父さんの警備会社と契約したっていう家や会社も結構あったね」
「確かに。かなりの契約件数だよ」
「事件が起こり始めたのっていつからだっけ?」
「あっ、えっと、確か……!」
翌日疑問をぶつけると、マナは泣き出しすぐに告白した。
「事件を起こしてるの、お父さんの会社なの……!
止めたくても、私じゃどうにもできなくて……。
アサとリクなら、何とかしてくれるんじゃないかと思って、わざと私がお賽銭箱を動かしたの……」
それから間もなく、マナのお父さんの会社には捜査が入った。
当然、連続不法侵入騒ぎもピタリと止んだ。
マナは自分のお小遣いでお賽銭箱を弁償した後、お母さんと二人で引っ越していった。
数カ月後、マナからメッセージが届いた。
「アサ、元気でやってるみたいだよ」
「いつかまた会えるといいね、リク」