「世一君とお姉さんって、町の美化活動してるってほんと?」

「うん、してるよ」

「うちの隣の家なんだけど……」



 同じクラスの森さんによると、隣家のゴミ屋敷が酷いらしい。

 地区役員や役場にも相談しているが、全然片付けてくれないのでどうしたらいいのか悩んでいると言う。

 日頃からゴミ拾いや花壇の世話など、町の美化に力を入れている身としては黙っておけない。



「明日、姉さんと一緒に見に行ってみるよ」

「ちょっと怖いお婆さんだから気をつけてね」



 高校でも美化委員をやっている姉さんは、ゴミ屋敷を見るや腕まくり。



「これは掃除のしがいがあるわね」

「森さんのご近所だから、波風は立てないでよ」

「その子あんたの彼女なの? 最近の小学生はませてるわね」

「……違うよ」



 まずは話を聞いてみようと玄関チャイムを鳴らしたけど、出てくる様子がない。

 家の周りを回ってみる。



「姉さん、裏口が空いてる」

「ほんとだ。すみませ~ん!」



 奥から痩せこけたお婆さんがのそと現れた。

 うわ、目つき悪い魔女みたい……。



「私達美化活動してまして、ちょっとお邪魔して話を聞かせて頂いてもいいですか?」



 恐れ知らずの姉さんは悪臭もゴミの壁もものともせず入っていく。



「誰だい、あんたたち! 勝手に入るんじゃないよ!!」



 お婆さんがいきなりこちらに向かって速足で来た。

 僕と姉さんはぎょっとして、左右に避けた。

 そのままお婆さんは裏口の戸を掴むと、ガタガタ言わせながら戸を締めた。

 げっ、閉じ込められた……!

 お婆さんが鋭い目つきでくるりと振り返った。

 ひっ、僕達殺される……!?

 すがるように見ると、姉さんは一人で驚いていた。





 数週間後、ゴミ屋敷はすっかり片付けられた。

 お婆さんは役場の手配で老人ホームに入った。

 そんで、僕は森さんからお礼に手作りお菓子を貰ってしまった……!



「お婆さん、目が見えなかったなんて全然知らなかった。

 ……だから片付けられなかったんだね」

「家族とは折り合いが悪いし誰にも頼れなくて、余計に意固地になっちゃったんだって」

「世一君、本当にありがとう。お姉さんにもお菓子渡してね」



 うんと言ったけど、姉さんにあげる気はない。

 だって、からかわれるだけだもんな。