「痛ってえな。」

私とぶつかった男の人は
鋭い目で私を睨む。

「すみません…」


「気をつけろよ。」
そう言って男の人は去って行った。



***


人が多いし。

男の人とぶつかって睨まれるし。
やっぱ、家で大人しくしてた方が良かったかな。


そんな事を思って人通りの少ない道にでた。


小さなお店が並んでいて。

ふと、見たオシャレな洋服屋さんのショーウィンドー。


そのショーウィンドーに
男の人が見えた。





その人は、私の1番会いたい人だった。


「姫乃さん。」


「…ハル………!」


背の高いあなたを見ると、綺麗な月が見えた。


――――あれ?

今日の満月はこんなに…
ボヤけて、滲んでたっけ?


そして━━━
私の身体に感じる人の温もり。

今日って…こんなに暖かい日だったっけ?


私は、ハルに包みこまれていた━━━


○○○○○○○○○○○○○○○


真ん丸くて、白く輝く満月の下で━━━…

また、廻り合える事を
この綺麗な月だけは知っていたんだね。



ずっと、
ずっと前から・・・


○○○○○○○○○○○○○○○


「姫乃さん、ずっと、逢いたかった………」



【完】