◇◆◇◆◇◆
腰のあたりがほんわか、あったかい。
気持ちよくて、柔らかい羽毛布団の海をふわふわただよっている気分。
このままふわふわしていたかったのだけれど、急に腰が引っ張られるような感覚で、地上に降ろされてしまった。
ガラスの靴を履いた私の足が、赤いカーペットの上に見えた。
ここはどうやら、写真スタジオのよう。様々な衣装のかかったフロアの奥から、嬉しそうな子どもの笑い声が聞こえた。
水色のドレスを着たわたしが、こっそりのぞいてるのは過去のわたし?
小さいわたしも、水色のドレスを着ているの。
三歳の誕生日、写真屋さんに連れて行ってもらって、自分で選んだドレス。
シンデレラと同じ色のドレスを身にまとい、わたしはごきげんではしゃいでいた。
「沙也は本物のシンデレラみたいだな」って、お父さんが笑ってた。
「お母さんの娘だもの、美人なお姫様に見えて当然でしょ」って、お母さんもうれしそう。
二人のすぐそばでくるくる回って、ドレスのすそが広がるのを喜んだわたし。


