「今の両親は、オレがあまりにも大人びているから、心配だったらしい」
素朴な疑問が浮かんで、ちょっと質問してみた。
「大人びた赤ちゃんって、どんな赤ちゃんなの?」
だって、見た目は赤ちゃんで、多分体力的にも赤ちゃんでしょう?
「うーん、例えば、オレは赤ちゃんの頃から、口に何でも物を入れて舐めたり、指しゃぶりをしたりっていうことはなかった。無駄と思われるような動きもしないで、運動機能の向上だけを目指していた。親が必死に『いないいないばあ』をしても、愛想笑いをするだけだった。他にも色々あったけれど、赤ちゃんらしくなくて、時々おっさんを抱っこしているようだったと母に言われたな」
「多分、健斗君って見た目可愛い赤ちゃんだったでしょう? なのに必死にあやしても白けた目を向けるおっさんだったなんて、健斗君のお母さん、思っていたのと違っただろうね」
「そうだと思う。可愛さはなかったが、育てやすさはあったと思うぞ。何しろ、誤飲のような事故は起こさないからな」
「育てやすさと赤ちゃんらしさはなかなか共存しないんだね」
健斗君のお母さんが、ちょっと気の毒になった。
「そんな訳で、ようやく自分の発音が幼児語を卒業した頃、前世について語ったらすぐに信じてくれたよ。前世の記憶持ちな上、この家に生まれたら霊的な力まで授かっちゃってさ。オレっていわゆるチートキャラなのかもしれない」


