それを聞いて、わたしは一瞬、ぎくっとした。
まさか、ね。
このジャラ男の言うことなんて信じない!
誰が信じるものですか!
「美奈! 行こう!」
カバンをつかんで、ジャラ男の手を思い切りそれで叩いた。
「あ、君!」
「沙也! 待って!」
わたしは夢中でお店から飛び出した。後ろを美奈が追って来ているのを確認して、また走り出す。
......ジャラ男はもう、あきらめたみたい。
「何だったんだろうね、あいつ」
「うん、変なやつ。わたしに何がとりついてるっていうんだろう?」
気味が悪かったね、なんて言いながら無事に帰宅したわたしは、ようやく気付いた。
スマホ、ドーナツ屋さんのテーブルに置き忘れちゃった!


