異世界巫女修行はじめました~理不尽な現世を飛び出して優秀な呪術師と一緒に異世界で人助けをします~


 また、しばらく沈黙した後。

「彼女の部屋から遺書が見つかって、両親へのおわびの言葉と共に、いじめていた女子の名前と、何もしてくれなかった担任の名前が書かれていたそうだ。何度か担任には相談したのに、オレと同じくほかの子と付き合えばいいとか、気にするなっていう言葉かけだけで、解決するための手立てが何もなかったらしい」

「......その子、悔しかったんだね。誰にも助けてもらえなくて」

「そうだと思う。オレも自分の行動が全然役に立たなくて悔しかった。だから、ちゃんと勉強して『世界一の宝物を大切にできる』先生になろうって考えたんだ」

「そうだったんだ......」

「それで、大学に入って、大学院の修士課程(マスター)まで進んだところで、交通事故にあった。死ぬ直前に思ったのが『まだやり残したことがある!』だったんだ。『困っている子を救いたい。まだ何もできていない!』って強く願ったら、今の母の腹の中にいたって訳」

「それ、全部本当のこと、なんだよね?」

「ああ。信じられないかも知れないけれど、本当。だから見た目は子ども、頭脳は修士だと思ってくれたらいいよ。ちっちゃい時は大変だったんだぞー、まわりと精神年齢が全く合わなくてさ」

 そう言って、生まれ変わってから入園した保育園で、いかにおゆうぎ会が苦痛だったか、笑いながら教えてくれた。健斗君の言動が時々オジサンっぽくなる理由がこれでわかった。