わたしはそのまま静かに健斗君の話の続きを待つ。
「保育園の頃からの幼なじみが、いじめを苦に自殺したんだ。それが、小六の夏だった。夏休み明けの始業式の日、マンションから飛び降りた」
「......」
わたしは、何て言ったらいいのかわからず、ただ、息をのんだ。
「オレとは違う小学校に通っていたから、状況はよくわからない。ただ、彼女をずっと無視して、陰でこそこそ悪口を言ったり、持ち物をかくして困らせていた女子のグループがいたっていう話だ」
幼なじみって、女の子、だったんだ。
悔しそうに顔をゆがめて、健斗君はゆっくり話を続けた。
「優しい子だったよ。保育園ではみんなのお姉ちゃんみたいな存在でさ。ちっちゃい子からは本当に好かれていた。あんないいやつがどうしていじめられるのか、不思議だった」
「女子って、外から見たのと中身は全然違うもん。びっくりするほど残酷だから。自分より少しでも優位な子がいたら、集団で引きずりおろすくらいのことは平気でするよ」
「そう、みたいだな。単純明快な男子の世界とは違うんだって、そのころのオレは全然知らなかった。だから彼女から『無視されている』って相談を受けた時も、じゃあ、ほかの子と付き合えばいい、なんて答えていたんだ......」


